第五話「宵が懐かしい -1」

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他の客とカラオケの取り合いになってしまって、

遂にモンちゃんに追い出されてしまった。

少々やり過ぎたか。

二人はモンちゃんに悪態をつきながら店を出て、「Bar ワイワイ」の入っているビル前にある小さな公園でベンチで互いにもたれかかりながら腰掛けている。

ヨウコはああだこうだと喋りが止まらない。

「結局ね、私は相手にされてないことには文句ないわけ。でもやった仕事を評価されないのには耐えられないのよね。大体いい仕事もせずに飲み行くことばっかり考えてる男連中が私と一緒の給料ってのが気に入らない。」

「一緒なんだったらいいじゃないですか。というかこの文句直接言ってます?」

「言ったわよ!でも、そしたらどうなったと思う?次の日から無視よ、無視。ケツの穴の小さい連中が、揃いも揃って無視したからね。鼻くそよりも価値がない連中にはこれ以上言ってもしょうがないからこうやって関係ない人に愚痴るのよ!」

「関係ない人達可哀想ですね」

「あああ〜、でもね。ごく稀に話しの分かる男がいるのよ。だけどそういう奴に限ってストレスだとか鬱だとかいって辞めてくのよ・・・。なんなの?男ってやわ過ぎない?」

「ああ〜」

「大体ね、ウチ同僚の女の子達だって、何しに会社来てるかって、男達ときゃっきゃきゃっきゃ話して。なんだと思ってるのか・・・」

「・・・。いやあなんなんでしょうねえ。」

「ね。まったくなんなのよ、まったく。」

タクオはうんざりだが、身体が密着してるのが気分好いし、なにより飲み過ぎ、はしゃぎ過ぎて、突然力が抜けてしまっている。頭はやたらとスッキリいい感じで、万能感漂ってるのだが、ベンチに座ってしまったが最後どうにも身体に力が入らない。ちょっと今日はペースが早すぎたか。相変わらず隣ではヨウコがああだこうだと喋り続けている。本来聞き手タイプではないタクオからするともういい加減にしろと思うが、言うのも面倒だ。

「そういえばヨウコさん、モンの親父の話しだけど、結局どういうことなんだっけ?」

「いまそれえ?もう今日は無理よ。ダルいから、今度にしてちょうだい。」

ヨウコはそれはそれはダルそうに言った。

「え。ああ。すみません。」

「ちょっと、このらーめん食べたことある?」

そう言いながら公園の前にある西からやってきた白菜らーめん屋を指差す。

「ああ、ありますよ。食べたいんですか?」

「そうね。食べたいかも。」

「今食べるんだったらもっと西行きましょうよ。博多ラーメン。ここは僕には薄味過ぎます。靖国通り出ればありますから。」

「ああ、あそこね。いいわ、行きましょ。」

二人はもたれるように、ぶつかるように立ち上がり靖国通りへと向かう。

 

タクオの頭にはイタリア語で何を歌ってるかは知らないが、気だるく、でも健気に歌うNADAのSenza un perchéが流れている。

なんだか気分がいい。

「エ〜、ドゥタラニ〜タ」

「なによそれ、何語なのよ。」

「え、あ、ええ。まあ」

「え?」

「え、あ、はい。」

ヨウコはタクオの顔をのぞき込むが、タクオは返事をせずただ笑顔で歩き進める。

辺りはまだまだ眠らぬ街新宿歌舞伎町、いや、東京だ。二人はもつれながら歩いていく。

 

続く

 

 

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
月、水、金(11:30更新)

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