第四話「全員集合新宿。-9」「ミレン」

ゴールデン街/観光客

「で、マスターどうします?こないだの話し考えてくれました?」

他の客が帰ったのを見計らって宮内は切り出す。

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「マスターね、悪い話しじゃないはずだよ。」

「でもね〜、宮内さん。正直なところうちはともかくとして、お隣さんなんかは土地の所有者も分からないとかなんとかっていうくらいだよ。だからお金どうのこうのでもないのよ。」

「それはウチで解決する話しだから、上にいる人達をなんとかマスターに説得してもらいたいんですよ。いやタダっていう訳じゃないんだしマスター、なんとか協力してくださいよ。」

「・・・。でもねえ、最近は外国人の観光客が増えたりで皆楽しくなってきてるところだからねえ。俺だって、何十年もやってきた環境を変えるのは恐いよ、こないだ言われたくらいの金じゃあ、なんともねえ・・・」

「なんだマスターそれだったらはっきり言ってくださいよ、幾らだったらマスターは動いてくれるんです?」

「う〜ん・・・。だけどねえ、金はあったらあったでまた困っちゃうしねえ、どれだけあってももうこの年からじゃ使い切れないし、子供、孫がいる訳じゃないしねえ・・・」

なんとも狡い顔をたまに挟みながらマスターは言う。

「そうですか、まいいです、じゃあこの話しは一旦終いましょう。」

「えっ?」

「いや、いいんですよ、私もね特に焦ってる訳ではないですから、ただ良い話しだからマスターにはちゃんとお話持ってかなきゃと思ってたくらいですから、マスターがやる気でなければいいんです、ま、とりあえず今日のところはいいです。じゃ、また飲み来ますね。」

さーっと言って金をおいて宮内は立ち上がる

「あ、ああ、」

「それじゃ」

宮内は店を出ようとする

「あ、そうだ来週鹿肉入るから来てくださいね」

「ええ、きますよ、とっといてください。」

「ええ、じゃあ」

マスターは、引いた宮内に、一応まだ金額次第だよという感じで、また来週も来いと言っている。食えない老人だと宮内は思いながら店を後にする。

さて、どうするか、来週来る時には一発で決めれる金額を出したい。でもマスターの思う通りの額を出すのはなんとも癪に触る。だけど実際はあまり時間がない。

まあ、いい、とりあえず今日の感じで後は金額だけだというのが分かっただけでも来た甲斐があったということにしとこう。

 

さてそろそろ小腹が減ってきたなと思いながら宮内は巨漢を揺らしながら次へと歩き出す。

夜はまだまだ何が起こるか分からない時間。

ゴールデン街の酔客もまだダレていない、金曜の夜、一番好い時間だ。

 

全員集合新宿。 「Bar ワイワイ」  23時過ぎ

 

モンちゃんは全くワイワイする気になれないみたいだ。

タクオは気にせず他の客と一緒に玉置浩二の田園を一生懸命歌ってる。

ヨウコは場違いに、リズムを取れないまま、髪を振り回しながらカラオケの音で踊っている。

 

モンちゃんは二人が明らかに酔って楽しんでるのが、うっとうしい。しかも自分の店で。しかもヨウコがあんな話しをしておいて、タクオも真剣に聞いて「どうしたもんかねえ」とか言ってくせに、自分の事をそっちのけで酔っぱらってるのに腹が立つ。

だがしょうがない。度を過ぎる飲み方をしてる酔っぱらいに真面目な態度を求めるモンちゃんが間違っている。

 

それにしてもヨウコの話しにはびっくりした。

自分もタクオもヨウコとは初対面なのに、まさか自分の親父の話に絡んでくるネタを持ってるとは思いもしなかったし、ヨウコの話しで余計に心配が増してしまった。

 

ヨウコの話しでやはり親父が詐欺師に騙されてるという思いが更に強くなってしまった。

そんな状況で息子として何もできることが無いというのがモンちゃんは口惜しい。

そして頼りにするタクオも「しょうがねえよもう。親世代の厄介事を俺等がなんとかしようと思ったって無理さ。」と言って、酔っぱらって歌っている。

 

「おい!モン!酒オカワリだよ!持ってこい!テキーラいっとこーー」

歌い終えたタクオがマイクで叫ぶ。ヨウコは曲間のBGMでも踊っている。

「もう〜・・・」

「あ?なんだよ、早く持ってこ〜い。」

「はいはい!でもタクオお前金あんだろうな??結構飲んでるぞ、お前もヨウコさんも」

「え?お前のおごりじゃないの?」

「おごらねーよ!お前なんにもしてくれてないじゃんかよ!しかもしてくれたとしても飲み過ぎは困るよ〜・・・」

「なんだなんだーー?そういうことならもう全く何も、何も、何も!何も協力してやんねえぞ!」

タクオは相当酔っている未だマイクを離していない。

「ああああ!はいはいはい。いいですよ。とにかくちょっと待って!」

モンちゃんはヤケになって、グラスに注いだテキーラを先に一度自分であおって、また注いでタクオの所へ持っていく、手にはグラスを三つだ。

「わかった。おごりでいいよ。でも俺も飲む!」

「おおおーー。いいねええーー。でもお前店潰すよそんなんじゃ。」

「いいんだよ!とにかく、ほらヨウコさんも、乾杯!」

「ハイ乾杯〜」

タクオはそういってスグに飲み干す。

ヨウコは無言でとりあえず飲み干す。

モンちゃんは飲んで「はあ〜っ」とため息を出しながらまたカウンターの中へ戻っていき、グラスにテキーラを注いで一人でまた飲んでいる。

結局とりあえずは飲んでしまえばいいのだ。

 

タクオと、ヨウコの酔いが覚醒してきている。

 

続く

 

飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。 経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。 月、水、金(11:30更新) 火、木、土(19:00更新)

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