第四話「全員集合新宿。-8」宮内会の話

サイコロ/丁半

宮内が始めにのめり込んだのはサイコロだった。
大学の先輩に連れられていった賭場から本格的にのめり込んだ

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小学の頃には祖母を相手に、中学、高校の頃には仲間内で麻雀をする程度だったが、それなりにやり込んでいたのと、場の流れを捉えて人と勝負する博奕には自信のあるほうで、馬や、ボート、パチンコはからっきしダメだった。

だから本格の賭場に行っても宮内は始めから自然だった。

だが、1年ほどどっぷりと入れ込んでるうちに稼ぎもしたが、周りの旦那衆と一緒に熱狂している自分が妙に情けないと思う瞬間が来てからすっぱり止めた。
テラ銭をとる「テラ取り」になる道を選んだ。少し上世代のチンピラから、稼ぎの少ない博徒を相手に、小さい盆を新宿の雑居ビルの一室を借りて賭場を開くようになった。

賭場のアドレナリンが蒸気の様に吹き出ている光景が宮内は大好きだった。

そしてその中に自分がいない事に胸をなで下ろしている20代前半だった。

だが、後ろ盾もないから大きな賭場を開けずにいる宮内は、何年経っても上客を掴めないでいた。
そんな25歳を前にした頃、イギリスで売れないボクサーをしていた宮下の年の離れた実の兄政義が40歳を前にして日本に帰国をしたのだ。

日本で働き口を探そうにも20年近くも活躍できないままに用心棒なんかをしながらボクサーをしていた政義は、高給をとれる仕事じゃないとしないといってるから、中々働き口が見つからないでいた。
そこを恐る恐る宮内は兄、政義に「兄貴、俺賭場開いて食ってるんだけど、一緒にやらないか」と声をかけたのである。最初政義はカタギの道に進みたがって首を縦にふらなかったが、帰国してから半年くらいして「やるか。お前が渡りを付けた商売だから俺は3割でいい。その代わり必要経費は出せ」と遂に一緒にやることになった。そこからは早かった。

政義はそこら中からボクサー崩れや、若いチンピラをかき集めてきて「こいつらに小遣いだしてやれ。それと看板出すぞ」と言って中々達筆の字で(宮内会)と書いた看板を掲げた事務所を歌舞伎町で開いたのだ。

宮内は多少おっかなびっくりだったし、当然歌舞伎町だけでなく、東京中の博徒連中も黙ってはいなかったが、大きい賭場を開きたかった宮内は、兄に荒い事は任せて自分は客集めと賭場の仕切りに集中した。

政義は何度か危ない目にあっていたが、元々荒い男だ、5年も経った頃にはどこにも敵はいなくなっていた。宮内自身一つの賭場にこだわって、拡張を望まなかったし、政義もそれがいいと言ってくれていたから、完全に歌舞伎町の中でも独立を果たした。

大きかったことは、何と言っても警察の連中と地元の地主連中が御用達になったことだ。
宮内は上手く上手く客を厳選し、他の博徒はたまに招くだけで入り浸ることはできないようにして独立性を保っていく事を念頭においてやってきた。

始めてから既に30年。政義は10年前に突然引退してとんかつ屋を開いたが、宮内会は盤石の地位を築いている。

だが、最近の宮内は50を過ぎて物足らなくなってきた、賭けに没頭し浮き沈みを繰り返す連中を眺めてまるで自分が神にでもなったような気分になれるテラ取りだが、それを維持するための事の接待やらあれこれなんぞ作業である。ストレスが溜まるとかそういうことではないが、あの20代前半の頃の1年間のように、また自身も張る側になりたくなってきたのだ。熱中したいのだ。アドレナリンを全開に没頭したいのだ。だが、それはこの期に及んでサイコロでも手本引きでもない。そんな時、ある賭場の客から話しを持ちかけられた、話しを聞いて一瞬で虜にされる計画だった。

それには金と、賭場の経験ではなく、念入りな下準備が必要だった。

ゴールデン街「ミレン」   23時前

宮内は鈴木の事務所を出た後に一人でゴールデン街の「ミレン」で飲んでいる。
飲んでいるのはまたホワイトホースのロックだ。
店内ではJazzがかかっている。やたらと出てくるつまみをどんどん口に運びながら、タバコを吸い、ホワイトホースを飲み、たまに隣の若い男が「ああ、いいですよねえ・・・」とかなんとか言いながらマスターと話している会話に宮内も加わったりしながら、既に2時間近くは飲んでいる。

客はずっと隣の一人の客だけだ。宮内の目的は客が帰るのを待って、マスターと話す事らしい。中々帰らない。

「そういえばマスターね、知ってるかな、ゴンちゃん死んだんだぜ、くも膜下出血だよ」

「ああ、僕も聞きましたよ。ゴンちゃんまだ若いのにね50前だったよね確か」

岡本太郎みたいな風貌のマスターは自分もその件話ししたかったとばかりに長袖のシャツをまくり上げながら食いついてきた。

「いや、それがね駅の靖国通りの横断歩道で突然倒れたのよ、たまたまウチの若いのが介抱したのさ、どうやらコレでぶっ飛んでた最中だったらしくて、面白いぞってんで救急車にも乗ってついてったらしいんだこれが、息子ですとかって言ってさ。でもゴンちゃん実際は倒れたときには既に意識が完全に無くって、病院につく頃には死んでたらしいよ、急だよねえ人間死ぬときは。でも案外幸せだよね、俺も死ぬ時はパッと死にたいもんだよ」

「そうですねえ・・・」

そんな話しをしていたら、隣の若い客が

「あ、マスター僕そろそろ・・・」

といって帰ってしまった。帰ったあと宮内は

「なんだよ、これから話しが面白いってところだったのにねえ」

「・・・」

 

続く

第四話「全員集合新宿。-9」「ミレン」

 

飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
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