第四話「全員集合新宿。-7」

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二人は歩く 21時半頃

タクオは自分勝手なヨウコのペースに戸惑うのをスグに止めて、ヨウコの勢いに乗っかって動けば楽しい事あるんじゃないかと、酒のマワリと共に期待感が上がってきた。

行く先も知らないのに一人でどんどん小径の出口へ向かっていくヨウコに追いつこうと小走りだ。

酔っぱらって走るっていうのは既に楽しい。

「ヨウコさん、こっちです。」

パッと手を引き区役所通りの方へ向かう。

ヨウコは振りほどくことなく、横に並んできた。

あれっとタクオは押し返された気分で、手を離して

「ココです。このビル。行きますか。」

エレベーターに乗込む。

イキナリ見知らぬ女を連れて行くっていうおかしさにタクオはまだ気づいていない。

酔ったノリは、「この行動、他人がどう思うか?」みたいな、そういう社会性をばっちり切り離してくれるから重宝する。大胆に大胆に。

 

エレベーターを降りて「鈴木開拓社」のドアに手をかけるが、どうやら鍵が閉まっている。

「あ、もうお開きしたのかも。」

「ええー、そうなんだ。えっ。てかここ?ここなの?」

ヨウコは看板を見て言う。

 

「え?そうですけど、なんでですか?」

「いやー、うーん。なんだっけな。思い出せないけどなんか既視感。」

「はあ。とりあえず下、おりますか。」

 

エレベーターの中で二人は無言だ。タクオはちょっと冷めた様子で、ヨウコは何かを思い出そうと考え込んでいるうちにエレベーターの扉が開き二人は外へ出る。

 

「えーっと、どうしますかね?その友達の親父さんいる場所見当つかないし、僕なんだかんだ酔ってるので、どうします?少し歩きません?」

「いいよ。私も酔っぱらってるし、外涼しいし。いこ。」

二人はなんとなく歌舞伎町の方へと歩き出す。

 

歩きながら二人は何を話すでもない。

ただ盛り上がりかけて急にあてがなくなったので、一緒にいる意味もないのだが同じ酔っぱらい同士気を使う相手でもないので、ダラダラと旧コマ劇の方へと歩いていく。

途中ロボットレストランの前を通ったので店先のロボットを見ながら入ろうかと考えたが、足は止まらなかった。いやこれどうすんだ。タクオは少し歩いただけで歩くのも飽きてしまった。モンちゃんの所でも行こうかと思ってる時に。

「あ、バッティングセンター行こうよ。」

ヨウコが隣で陽気な声で言う。

「ああ〜、いいですけど、さっき話してた友達がやってる店は行こうかと思ってたんですけどどうですか?」

「なに、なんだ、それでいいよじゃあ。」

「じゃあ行きましょ。すぐそこですから。」

そうだよ、モンちゃんにちゃんと話ししといたほうがいいしそうしよう、そうしよう。

 

「Barワイワイ」   22時前

 

「モンちゃーん。またきたよー、ビールー。」

「おおお!タクオ!なんだよお前、お、なにやってたんだよ。この短時間でナンパかよ」

「あ、違うのよ、私がナンパした。」

 

店はもうすぐで開くらしい、モンちゃんと、他のチャラい店員が二人が開ける準備をしている。

 

「カウンターでいいよね。おねえさんはなに飲みますかー?」

「あ、わたしはなにか強いお酒。」

ヨウコはまだまだ飲む気だ。とはいえ結構酔っぱらってるのか、カウンターの椅子に座るのにちょっと手こずっている。さっきまで凛としてた姿勢も少し力が抜けてる感じだ。

「強いのっていうとウチだとテキーラとかしかないんだけど・・・いいですか?」

「あ、いいねテキーラいきましょう。チビチビやるわ」

モンちゃんがビールと三人分のテキーラを持ってきた。

タクオは一瞬迷ったが、まいいかという感じで「よし、飲んじゃおう。乾杯!」

ヨウコも合わせて、モンちゃんはカウンターの中で、三人で一気に飲み干す。これは結局チビチビじゃないなこの女。

別にいいんだよ、飲んでしまえばいいのさ。

 

「タクオ、どうだった?聞かせてよ。」

「ああ、お前の心配通りだよ。あれはダメだな、長い付き合いっぽいけど親父さんのペースじゃないものな。身ぐるみはがされんじゃねえの。」

「ええーー、それじゃだめだよ、ヤバいじゃん・・・」

「あ、でも俺月曜にそのオッサンと会うよ。名刺渡されたもん、ほら」

タクオは名刺をモンちゃんの前に出す。

「なにこれ宮内会?住所書いてないじゃん、ヤクザ?え、え、えーーヤクザなの・・・?」

「じゃないの、でもお前の親父さんだって似た様なもんだろうさ」

「いやヤクザじゃないよ、不動産屋さんだってば」

「タダの不動産屋じゃないだろうが、それになんだよ鈴木開拓社って、親父さんのネーミングセンス疑うぞ、なんだよ開拓社って、金でも掘るのかよ」

タクオが小馬鹿にしたように笑いながら言う横で、ヨウコが髪を何度もかきあげながら名刺を凝視している。「みやうちかい・・・、みやうちかい・・・」

「なに、知ってる人?」タクオは聞く

「うーん・・・、なんか今日何度も見たような気がするのよね。この名前」

「え?どういうこと?なにタクオこの人さっき知り合ったんじゃないの?」

「そうだよ。さっきゴールデン街で」

「ああ!間違いない、やっぱり!さっき行った事務所の鈴木開拓社と、この宮内会!ああ〜、そうかそうだ、ああ〜」

「なんだよ、なになに?知ってるの?」

「知ってるも何も、今日この宮内会と、鈴木開拓社の書類を届けたのよ。うちの会社のお客さんに」

「ええー、なになにどういうこと??」

「だから、知ってるの。この宮内会。封筒に書いてたのよ。鈴木開拓社も。」

「なんの書類に??」

「なんの書類ってそれは言えない・・・だって」と言いかけてヨウコはハッとのけぞるって二人を交互に見やった。

「え、タクオなになに?どういうこと?」「いや俺は知らないよ」

一人で勝手に何度も頷いて、ヨウコはなるほど顔で「タクオくん、これは面白いわよ。面白い!」大声で叫ぶように言ってモンちゃんにテキーラを注ぐように促す。

モンちゃんとタクオは目を見合わせてなんだなんだといった表情だ。

「いいから注いで。二人も、ほら」

モンちゃんは言いなりに凍ったテキーラを取りにいってグラスに注ぐ。

「とにかく一回乾杯しよう」

「なにに?」

「なににって、それは特にないけど私面白い。今面白いから乾杯するの」とヨウコはスゴむように言った。

 

つづく

第四話「全員集合新宿。-8」宮内会の話

 

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
月、水、金(11:30更新)

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