第四話「全員集合新宿。-6」ゴールデン街

「なに飲みます?」

「ビールね。ここからはビール」

「あ、じゃあ僕もビール」

7席ほどの店で丁度二人が入ったら満杯になった。

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店の主人は60を過ぎた頃の長髪を後ろで結わえ無精髭をたくわえた、寡黙そうで喋り出すと止まらない工藤サンだ。

あまり冷えてないキリンの瓶ビールを二人の間にグラスと一緒に出して、スグに菜っ葉のおひたしを小皿に二人分出して、さっさと奥の常連と話し始める。

雰囲気に合わないキンキンうるさめの声だから、タクオは毎回来るたびに「このオッサン可笑しいなあ」なんて思ってる。

ヨウコもそう思ったのか、何か言いたげだがタクオの注いだビールを乾杯せずに勝手に飲み始めた。

タクオも自分のグラスにビールを注いで勝手にやる。

おひたしは一口で食べてしまった。

 

「え、ヨウコさんは今日は結構飲んでたんですか?」

「ああ、まあまあ飲んでる」

ギラッと睨みつけるように言われて、その後はタクオは黙ってしまった。

「タクオくんは?」

ヒッ!っという反応で

「僕も結構飲んでます。でも途中で用事入ったりして今は結構冷めちゃってます。」

「そしたら私もそうよ。優柔不断などうでもいい男に引っかかってて、酔いがつまらなくなったわ」

「あ、ああ・・・。なるほどです。」

「ふん。まあいいのよ、飲み直しね。飲みましょ、ほら。」

ヨウコはタクオのグラスに注ぎ返す。

タクオもヨウコの空いたグラスに注ごうと動くと、

「いいよ。あとは手酌ね。」

「あ、うす。」

ヨウコは手酌でガンガン飲み始めた。

「それで?タクオくんは何か面白い話しある?」

ヨウコはさっきまでの雰囲気とは違う。酔いが醒めたといっても、結構な酒量からくるいい加減さが出ている。

タクオはタクオで、自分がいつも言うような台詞だなと思いながら、

「ああ〜、そしたらさっき突然用事があったって言ったじゃないですか。」

「うん。」

「地元の同級生のお店飲み行ったら、そいつの親父が詐欺師にカモラレそうだとかっていうんで、結局その親父と詐欺師に会いにいったっていう話しがあります」

「え、なにそれ。面白そうじゃない。いいねタクオくん。続けてー」

「あ、はい。それで友達は行かずに俺だけ会いにいったんですよ。友達の親父さんの会社の事務所この辺なんですけど、たまに顔出したりしてたんで、自然な感じで行った訳っす。」

「ふむふむ、それで?」

「それで行ったら、詐欺師もいて、友達言ってた心配は本当だったんだー。と。」

「なるほどね。それで?」

「で、それを友達に報告して。それだけです。」

ヨウコは顔をしかめて

「それだけ??え、君、話し下手くそねー。どう考えても話しの始まりはすごく面白い話しだったじゃないのよ。」

ヨウコはビールをまた注いでぐいっとひと飲みだ。

タクオはシュンとはしてないが、黙ってしまった。自分のビールもあったばかりの女に取られてるし、いきなりけなされるしで、とりあえず店の主人・工藤さんの方を向いてみる。

「君ね。酒が飲める風なのに話しがつまらないんだったら、家で飲んだほうがいいんじゃないの?」

ひどい言いようだし、イキナリ過ぎてタクオは何も言い返せない。

だが、ふつふつと怒りがわいてきて

「え。え。え??イキナリっすね。自己紹介も無しでイキナリ面白い話ししてよ。っていう神経の人の方が家で飲んでろって思いますけど僕は。」

「ぼくわあ。」ヨウコはタクオの言い方をオウム返しで馬鹿にする。だが、なんとなくかわいがる様なおうむ返しだ。

タクオは更にムっとしたが、更に腹が立ちそうなので何か言うのは止めといた。

「わかった。その話しってついさっきの話しなんでしょう?」

タクオは頷く。

「そしたら、もっと面白い話しになるかもしれないんだから、もう一度その友達のお父さんに会ってきなさいよ。酒の肴の為にもうちょっと深い所まで首突っ込んできたら、その話しきっと面白いのになあ」

勝手なことを言ってる。

「こんなとこで飲んでても面白くないし、折角の出会いだから私も付き合ってあげるわよ。ほらいきましょ」

ヨウコは財布から2千円だけ取り出して、タクオの手を引いて店を出ようとする。

タクオは強引さにビックリしながらも、美人には弱いのでなすがままに、その2千円を工藤さんに渡して、「あ、また来ます。」と身軽だ。

ヨウコはスグに行動したタクオを褒めるような笑顔で「じゃ、いこう!」と勢いづいた。

滞在時間10分くらいだろうか。何とも早い4軒目だったなとタクオは思いながら階段を先に下ったヨウコを追いかけた。

 

続く

第四話「全員集合新宿。-7」

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
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