第四話「全員集合新宿。-4」ゴールデン街20時半過ぎ

ゴールデン街/夜

「あれえ・・・どこだったっけ・・・、確かこの筋だったんだけどな・・・。ちょっとあんたも探してよ。二階だけど、下に看板出てるはずだから。」

「はあ・・・、だからなんていうお店なんですか?」

「いや、だから、看板見たら分かるから」

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「それじゃ入り口の方からしらみつぶしで探しましょうよ。同じとこグルグルじゃあ見つかりませんよお・・・。」

男は面倒くさそうに言ったら、ヨウコは急に、

「あんたうるさい。ちょっとうるさい。もういいです。今日はココで、お疲れさまでした。また機会がありましたら。では。」

といって、丁重に男に礼をして別れようとする。

「いやいやいや、わかりました!。探しましょう。僕もちゃんと探します。ごめんなさい。探しましょう。看板何色でしたっけ?赤色?」

「・・・。水色。」

「それはさっきの島焼酎の店では・・・?」

「緑。」

「・・・。緑ですね。じゃあ、この道基準に一旦入り口の方へ向かって見ていきましょう。」

ヨウコは流石に酔っていて、若干千鳥足だ。だが顔つきはやけに凛々しい。

男とはもう別れてもいいのだが、ヨウコもヨウコで少し人肌恋しい時期なのである。だがとりあえずはもう一軒は飲みに行ってからどうにかなりたい。折角の快調な滑り出しで飲み始めた金曜日だ、着地もきっちりしたいのだ。

 

鈴木開拓社 」 20時半過ぎ

事務所は美味しい煙で、燻されている。

眼鏡の若い男はいない。

宮内と鈴木の二人が七輪を前にずっと同じ位置で、食べて、飲み、笑っている。

宮内はともかく、痩せた鈴木も相当食べたようだ。宮内と一緒に飲めば人は、宮内のペースになってしまう。

なんであれ二人は悪い酒ではない。何時間も向き合って飲んで、雲の上で飲んでいるような錯覚を起こす。

ふわふわと浮き漂っているかの様な感覚だ。ともかく楽しい。50を過ぎてこういう風に飲める相手がいるということは幸せな事だと、鈴木は思ったりしている。

 

ピンポーン

 

突然、チャイムがなり、入り口の扉をコンコンと叩く音がした後に、勝手に扉が開く。

鈴木は驚いて入り口の方を振り向く。

若い男だ。「鈴木のおじさん、今晩は。お久しぶりです。タクオです。」

「おお。誰かと思ったよ。どうした急に。」タクオは事務所にズカズカ入ってきながら「いやあ、なんかおじさんがココで酒盛りしてるってアイツに聞いたから、顔出そうと思って来たんです。ゴールデン街いく予定でしたんで。お邪魔でした?」

「大丈夫さ。宮内さん、いいですか?彼も一緒に。」「ああ、勿論構わないですよ。ウィスキー飲みましょう」

タクオは軽い会釈をしながら途中で椅子をとって、二人の間に椅子をおいて座る。

グラスを取って、宮内の酌を受ける。「あざっす。初めまして、タクオといいます。」「タクオくん。私は宮内です。よろしく。タクオくん若いね。いくつ?」

「23です。鈴木のおじさんの息子と同級なんです。」

「そうなんですよ。うちのも、この子も中学生くらいからうちで散々飲んできたんですよ。」

「ああそれはいいね。我々と似た様なもんですね。」「ああっ、そうですね。」

タクオはグラスを持って、宮内と鈴木に乾杯してから、いただきますと言ってウィスキーを飲む。

「しかし、相変わらずっすね。この中でで七輪だもんなあ。」

「ああ、肉もう食べちゃったよ。残ってないんだ。買ってくる?まだ火残ってるから」

「いや大丈夫です。適当に食べてきてるんで」

「あそう、我々はもう散々食べたよ。丁度そろそろ何処かへ飲みに行こうかと考えてたところさ」

「あ、そうなんですね。さっきモンのところ行ったら暇そうだったんで、たまには顔出したらどうですか。」

「いや、息子の店では飲まないよ。宮内さんもいるしね。」

「え?ああ、全然気にしませんよ私は、何処でも、何処迄もですよ」

宮内は丸い顔クシャっと、よく分からないタイミングでの笑顔だ。

 

タクオはテーブルに出されている書類の束を見つけて、凝視しながら

「それなんですか?なんかの計画書とかですか?」

「ああ、これはそうですよ。我々の今進めているプロジェクトです。」

そういって、宮内は封筒に書類をしまい、鈴木に手渡す。

「あ、いいっすね。おじさん達で大もうけ的な?」

鈴木は「まそういうことだ。」とやけに自信のある顔をしてタクオを見る。

「ふうーん。なんか面白いことだったら、僕も小間使いでなんかやらしてくださいよー。やたら時間は余ってるので。」

鈴木が何か言おうとする前に宮内が

「ああ、そしたら手伝ってもらおうかな。」

といって名刺をタクオに渡す。「今度この住所に遊び来てください。その時お願いしたいことがあれば、言いますので。いつでも来てくださいね。」

「あ、はい。了解しました。じゃあ週明けとかで顔出します。」

「是非是非」宮内はタクオをじっと見ながら笑顔で頷く。

鈴木は何か言いたげだが、酔っぱらってるしまいいかといったところだ。

タクオはグラスを飲み干しながら、

「なんかすみません邪魔しちゃって、一杯頂いたんで、そろそろ行きます。ごちそうさまでした。」

鈴木は、「何だお前、わかった、気をつけて飲んでこいよ。」「じゃあ週明けに待ってますよ。」と宮内が言う。

タクオは一礼をして「はい!。じゃあ失礼しますー!」

入り口に小走りで走っていく。

 

顔色は変わらないが、タクオは「なんだこの宮内って、笑顔が異常じゃねーか、鈴木のおじさんはなんでこんな明らかな狸と付き合ってんだ?」と早くモンちゃんに報告したい気持ちでエレベーターに乗込む。

なんだなんだ、とタクオは一気に酔いが醒める気分だった。感じたことの無い嫌な気分と、冷や汗だ。

つづく

第四話「全員集合新宿。-5」ゴールデン街21時過ぎ

 

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
月、水、金(11:30更新)

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