第四話「全員集合新宿。-3」ゴールデン街 飲屋サンケイ 19時過ぎ

焼酎しまあじ三宅島

ヨウコは先ほどの男を差し置いて、島焼酎を飲み続けている。
男が連れてきた店は、酒を一滴も飲めない、若いママがやってる日本全国の島焼酎をおいてる二階の店だ。

 

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ヨウコは三宅島から利尻島と飲む焼酎が一気に北上した。
北に行けば寒くなるのと同じで、ヨウコも一緒に来た男に冷めている。

大体、店のママはヨウコと同じ年の頃で30を少し過ぎたところだが、けばけばしいメイクにホットパンツを履いて、カウンター前にある階段を昇って屋根裏に酒を取りにいくたびに、他の常連客達がじっとママの太もも股間を凝視するのにつられて男もチラチラ見てしまうのが、ヨウコには気に食わない。

大体酒も飲めないような女が島焼酎を看板に商売してるんじゃないよ。と勝手な毒を吐いている。時折声に出てしまって男がヒヤヒヤしているが、知った事ではない。

だが、実際は酒の飲めない人ほど酒に詳しかったり、水商売に向いているのだろうが、それもヨウコは織り込み済みでこの店が気に食わない。

だが、酒は美味い。ヨウコは場に流されて酒の味を見失うような女ではない。美味い酒は美味いのだ。

つまみが出てこない・・・

だが頼んだつまみが30分以上経っても出てこないのにいい加減腹が立ってきた。

後から来た他の客の頼んだ冷や奴は既に出されているのをヨウコは確認している。ママもしたたかにヨウコを攻撃している。大体女の客なんて相手にしていないのだ。

「あの、頼んだ豆腐チーズ明日葉のせまだ?」

「ああ、もうちょっと待ってくださいね。」

「あ、はい。とりあえずもう一杯」

ヨウコのペースは変わらない。男はそろそろヨウコの飲むペースに恐くなってきた。
出会う前にも日本酒を一升近く片付けてきたというのもさっき聞いただけに、男は内心ヤバいアル中女をナンパしてしまったのかもと、少し後悔している。

だが、外見はもろに好みだし、今日は金曜日だから人肌恋しい土日に向けて多少は目を瞑るといったところだろうか、男は諦めずにヨウコに付きっている。

「あの、そろそろ次いきますか・・・?」恐る恐る聞いている。

「え”?まだ頼んだのきてないじゃない」男をぎょろっとした目で睨みつける。

「あ、はい。そうですよね・・・。じゃあ僕もオカワリください。」

「はーい!おかわりすぐにお持ちしまーす。」

ヨウコはそれよりつまみを早くヨコセという目でママも睨みつける。
ママは気にせず、男のオカワリを注いだが、遂につまみを用意し始めた。
それを見て男もホッとした様子だ。作り始めれば簡単だ、スグに男の前に「豆腐チーズ明日葉のせ」なる一品が出された。

ヨウコは舌打ちしながら、箸を取り豆腐の角を崩して口に放り込む。明日葉も後からつまんで放り込む。

ぱっと食べて、焼酎を流し込む。

また豆腐を口に放り込む。

ああ、どうやら美味いらしい。

男が食べる分もおかまい無しに、どんどん口に運んでは焼酎を飲む。
途中焼酎ロックをオカワリをして飲んで、食べてと手が止まらなくなってきた。
この女はうまいつまみが出そろうともう周りが見えない。また社交を忘れてしまった。顔を上げて「これ美味しい。明日葉っていうの美味しいね。」これにはママも嬉しそうに「ああ、これ簡単なんですけど評判良いんですよ。」明日葉に絡む塩加減が絶妙に豆腐と淡白な味のチーズと合う。

「うんこれは美味しいですよ、あんたも食べたら?」「あ、いただきます。」と言った時にはもう一かけらしか残っていない。

この女に美味いつまみと、酒は渡してはいけない。

ヨウコはご機嫌になってきたのか男に「ねえもう一杯飲んだら次は私行きたいところあるから付き合ってよ」と優しい眼差しで男に訴える「あ、勿論いきましょう!」調子が上がってきた。

「ココいいよね。私また来ようかな」とママにも聞こえるように言った。「ああ、是非またいらしてください。オカワリは同じので?」「いや、始めの三宅島のに戻します。」「あ、わかりました。よかった気に入ってくれて、私三宅島の出身なんですよ。」「そうなんですねえ。いいとこですか?」「勿論いいところですよ。年に一度くらいしか帰ってないですけど、やっぱり落ち着きます海も綺麗だし」「へえ〜、私も行ってみたいな〜。ねえあんんた今度一緒にいく?」男はびっくりしながら「え?え?あ、ああ。行きましょう〜!」えへへと楽しみそうだ。

酔っぱらいの旅行行きましょうなんて約束なぞ、例え国内だとしても、宇宙旅行よりも遠い。

でもいいのだ、なんでもいいのだ。ヨウコは自分勝手な社交を楽しみ始めた。

 

次話=第四話「全員集合新宿。-4」

 

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
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