第三話「宮内という男。-2 新宿 「鈴木開拓社」 18時頃」

ゴールデン街近く、「鈴木開拓社」

宮内はトンカツ屋を出た足で、区役所を過ぎゴールデン街の入り口にある外国人がカラオケをしたりして店外にまで客が溢れている店に一瞥をくれながら、入り口前にあるビルへと入っていく。

エレベーターにのり7階で降りる。
7階でエレベーターを降りると一つ扉がありプレートには(鈴木開拓社)という金色の文字がシールで貼られている。宮内はノックもせずに扉を開け入っていく。

 

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中にはデスクが6つ島になっていて、奥には応接のソファセットが置かれている。
一人デスクでPCに向かって作業をしている眼鏡の男が「あ、宮内さん。すみません。まだ戻ってないんですが・・・。」
宮内は「ああ、大丈夫ですよ。奥で待たせてもらいますね。」と言ってソファの上座に腰掛ける。

腰掛けてから、少し間があったが宮内はソファの隣の棚を開け、中から酒瓶とロックグラスを取り出す。
「氷はあるかな?」と眼鏡の男に訪ねると、眼鏡の男が「ありますよ!」といって機敏な動きで給湯室の冷蔵庫からロックアイスの袋をそのままに持ってくる。

宮内 「ありがとう。何か氷入れる容器も頼んでもいいかな。」

眼鏡の男はしまったという表情で給湯室に戻りブリキのバケツを持ってくる。
宮内はまあいいかという顔で「ありがとう。」と言い、バケツに氷の袋ごと入れ込む。

ロックグラスに氷を入れ指でステアをしてから取り出した酒瓶の中身を注いで、またステアをしてから一口飲んだ。
ホワイトホースだ、ラガブーリンがベースだがコチラの方が安い。宮内は20代の頃からこの酒が好きだ。といっても大体どこでも飲めるからだけかもしれないが。

パンチのあるホワイトホースが宮内の顔をどこか引き締めた感がある。
宮内はふうと一息ついてから、先ほど自分の賭場の前で男から渡された封筒を取り出し、中身の書類を出す。
書類は結構な厚みがある。手繰りながら、ホワイトホースもどんどん飲み進めていき、どんどん注いでいく。

書類には地図と、予算表やら、建物の名前とか名義人のリストとか色々書いてある。
入り口の扉が開いて、一人の長身の痩せた男が入ってくる。みたとこ50代だろうか、スーツ姿にハットをかぶっている。ハットを脱ぐと綺麗な銀髪だ。

「宮内さんお待たせしました。」と男は言いながらソファに座る。
「いえいえ、お先にやらせてもらいましたよ。鈴木サン。」と宮内は言って、棚からグラスをもう一つ取り出して、氷を入れ酒を注いでやる。

鈴木は「どうも」とグラスを受け取り二人はグラスをぶつけ乾杯をする。

宮内が書類を鈴木に渡しながら、

宮内 「鈴木サン、結構いるね。」

鈴木 「やはりかかりますか。」

宮内 「うーん。まあしょうがないだろうけどね。」

鈴木 「やはり、一角だけということになりますかね。」

宮内 「うん。そうだね。兎に角相当に難儀だよ。」

鈴木 「そうですね。」

宮内 「だけどね、やらなきゃならないから。我々でやらなきゃ誰がやるよ。今迄散々再開発のその手の話はまとまらずに立ち消えなんだから。難しいってことは、それだけ意義があるってことよ。出来れば相当なもんになるでしょうが」

鈴木 「・・・。」

宮内 「大体我々ほどの適任はいないでしょう。稼ぎ云々じゃないよ大義だよ鈴木サン」

鈴木 「わかってますが、相当に使う訳ですから、使い切って自滅という訳にはいきませんよ・・・。」

宮内 「それが面白いんでしょう。私が賭場でヒリヒリした連中から稼いで、我々の賭けに突っ込むのが。賭け事で稼いだらきっちり賭け事に使わないといけないと思いません?」

鈴木 「そりゃまあ宮内さんはそうですが、私は・・・。」

宮内 「またあ、鈴木サンは私のところで一銭も使った事ないんですから、それはもう同じ立場ですよ。」

鈴木 「なんと強引ですな。筋がどうという話ではないですよ。ただ、私は我々が自滅するのが恐いんです。今無理にやらなくてもいいのではないかという、素直な話です。」

宮内 「・・・。鈴木サン。わかりますよ、気持ちはわかりますが、我々も若くはないです。だから今やらなければなりませんよ。これが60、70になった時にはタイミングが来たとしても体力がついていきませんよ。私は何がなんでも今だと思いますがね。」

鈴木 「・・・。」

宮内 「まあ飲みましょう。」

宮内は鈴木のグラスにホワイトホースを満たしきる。
自分のグラスにも満杯だ、そして無理矢理乾杯を促す。

鈴木は口に含みグラスを置こうとするが、宮内はゴクゴクと飲み干している。
宮内の三白眼は鈴木の薄い切れ長な目を捉えている。目がしつこい。

たまらず嫌々、飲み干した。宮内は口角をぐっとあげ笑みの目で鈴木を見る。
鈴木も感情は見えづらいが宮内を見る。今度は鈴木が酌をする。二つのグラスはまた満杯だ。宮内は笑みを絶やさずグラスを持ち上げ、また乾杯をする。

今度は二人揃って一気にゴクゴクと飲み干す。長テーブルにグラスをぶつけるように置く。「くっ。」と鈴木は一瞬咳き込む。

「鈴木サン美味いね。今日も。」
「ええ。」「一旦話は終おう。」「ええ。飲みますか。」「俺は食べたけど、未だでしょう?肉でも食べますか?」「そうしましょうココでやりますか?」「そうですね。そうしましょう。」「おい、肉だ。」眼鏡の男はすかさず外へ飛び出す。

鈴木は立ち上がり、棚から七輪を出し長テーブルにどんと置く。背広を脱ぎ。腕をまくり、棚の脇にある炭の入った段ボールを引きづり、トングで炭を七輪に入れていく。

ココでやるのか・・・。

この七輪は宮内がプレゼントというか持ち込んだ物だ。
炭を入れるのは鈴木だが、火をおこすのは宮内らしい。
部屋に煙と熱気がわいてくる。二人は肉がくるまでは窓を開けないらしい。いつもの謎のルーティンだ。

眼鏡の男はいい肉を買ってくるんだろう。

二人は、またグラスにホワイトホースを注いで乾杯をしている。
訳わからん。だが細い切れ長の目をした鈴木も楽しげである。

 

次話。第四話「新宿集合。-1 山手線 19時過ぎ」テキーラの勢い

 

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
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