藤圭子のススメ / 「浪花節だよ人生は」を聴いて知る、天才の母は天才ということ。

藤圭子

今日も暑い一日が過ぎた。

 

労働の汗を流した後の夏の夜。

あと何度夏を迎えるのだろうか。そんなことを考える年になった。

1969年9月25日 RCAレコードより「新宿の女」でデビュー。

藤圭子 18歳の年だ。

つい最近まで自分と同じ年だと思い込んでいたが、藤圭子が一つ上だった。

 

新宿という町はそのころの私にとってはまだ昼間に行く街だった。

武蔵野館に映画をよく一人で観に行った。

 

15 16 17と私の人生暗かった。

 

私が男になれたなら、私は女を捨てないわ。

 

京都から博多まであなたを追って、西へ流れていく女。

 

10代の私にはどうも

男にすがりつく女を描く演歌は心に入ってこなかった。

アメリカ、イギリスのロック、フォーク、ジャズ、アメリカンポップスに惹かれていたころなので、藤圭子に関してもラジオからヒット曲が流れてくるときに耳に入る程度以上には聞く機会はなかった。

 

しかし、この藤圭子の当時のたたずまいと歌の歌詞、

そしてそれを伝える、かつて聞いたことのない強烈な個性の声、これらによってダイレクトに深く心の部分に迫ってきていたのは事実だ。

多くの人のそれぞれの人生に、多かれ少なかれ衝撃を与えたその歌は、当然のことながら、 瞬く間に大ヒットとなった。

 

 

そんな1969年からはや50年、時代は流れ藤圭子は去って行った。

 

最初の出会いでは彼女のほんの片鱗しか知らなかった私だが、、

 

それがなんと、なんと今は完全な

「藤圭子中毒」となった。

 

これは、「年をとると日本人は やっぱり演歌だねえ」

というような種類のものではない。

 

「藤圭子」だけ、なのだ。

 

藤圭子が歌っている曲なら、どんな曲だろうと聞きたい、すべてを聞きたいと思ってしまうのだ。

 

昭和にヒットした数々の名曲をカバーしているとは知らなかったが、このヒット曲のカバーが特に良い。

なぜか、オリジナルの歌手よりもさらに魅力が増し、名曲、傑作に変貌している。

 

さらに、浪花節を歌っている藤圭子。

 

また「乱れ髪、人生一路(美空ひばり)」や、

「岸壁の母」などにおける歌のうまさ、

情感、艶、力強さ、、、、。どう表現したらよいのか、

本当に驚嘆に値すると言わざるを得ない。

驚きだ。

 

これはもはや天才と呼ぶしかないだろう。

 

 

こんなにすごい歌手だったのか!

誰も教えてくれなかった!!

 

 

普通、どんなに上手い歌手が歌っても、

「やっぱりオリジナルが良い。オリジナルにはかなわない」。

というヒット曲が多い。

歌唱力の点で少し落ちてもなんといってもオリジナルには勝てない。

と。

 

しかし、不思議なことに、いや必然的になのだろうが、

藤圭子はカバー曲全てにおいてオリジナルには成しえなかったさらに高い水準の心と歌唱力を発揮しており、

もうこれはうなるしかない。

ひたすら聴くしかないのだ。

 

 

「歌は心」だから。

 

なかなかうまく歌えないとき、「歌は心だ」と自分に言い聞かせる。

心が先か。

テクニックが先か。

心が先に決まってる。

しかし、

テクニックがなければ心を表現するまでに達しない。

 

藤圭子はおそらく母親のおなかの中にいたときから浪曲を聞いていた。そして、子守歌は浪曲だったに違いない。

 

40代のころの藤圭子が、「親たちの浪曲の訓練のつらさを見聞きしていたが、今になって思うと喉を鍛えておけばよかったと思う」と言っていた。

 

本人は浪曲師としての血の出る訓練こそはしなかったとはいえ、母親について回って幼いころより歌ったり、ギターの流しをやったりと、

完全な形の早期英才教育を受けたことになる。

 

 

クラシックの演奏家はその楽器を通して今は亡き作曲家の楽曲を現代に蘇らせる。

藤圭子という歌手は、その天賦の喉を通してかつての浪曲、演歌、ポップス、そして他のありとあらゆる曲に再び輝く命を吹き込むのだ。

 

その唯一無二の喉から発せられる力ある音楽。

 

どんな賛辞の言葉を駆使しようにも表現できないそのしなやかで強靭、かつ艶やかなる発声。

 

 

 

藤圭子さん。

私は、あなたが生きている間にこれらユーチューブの動画や歌声と出会いたかったです。

そして、元気な姿のあなたの歌を実際の目と耳で体験したかったです。

心から悔やまれます。

 

でも気を取り直してとことん聞きますよ。

そして日々、あなたを偲びます。

 

 

夏の夜が更けてゆき、

今宵も藤圭子の

「浪花節だよ人生は」

で大いに元気づけられながら筆をおきます。

 

 

 
グロリア斉藤

グロリア斉藤

職業:歌手。
経歴:福岡県生まれ。中学3年の秋から東京在住。マレーシア、タイ在住経験あり。
高校生の頃の希望職業:映画評論。
60代黄昏随筆家。

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