映画『用心棒』黒澤明監督/世界で一番カッコいい浪人を観たければコレを観ろ!

 
上映時間:110分
公開日: 1961年4月25日 (日本)
監督: 黒澤 明
音楽: 佐藤 勝
脚本: 黒澤 明 、菊島隆三
★★★★★(星5つ)
現代ハリウッドのアメコミシリーズに対抗できる超活劇!
三船敏郎の中年期をそのまま切り抜いたかのようなはまり役!

あらすじ

やくざと元締めが対立するさびれた宿場町。そこへ一人の浪人者がやってくる。立ち寄った居酒屋のあるじに、早くこの町を出ていった方がいいと言われるが、その男は自分を用心棒として売り込み始める。やがて男をめぐって、二つの勢力は対立を深めていく……。ハメットの『血の収穫』を翻案、時代劇に西部劇の要素を取り込んだ娯楽活劇。参照:Yahoo!映画

冒頭:犬が人の手首を咥えて歩くシーンで引き込まれる

三船敏郎演じる浪人「三十郎」が流れ着いた宿場町。
この宿場町ではヤクザの抗争が起きて荒廃している。

それを一発で説明するこのシーン。

犬がトコトコ歩いているだけなのだが、口には斬られた手首が・・・。
これを見た瞬間浪人三十郎は悟る訳だ「あ、この町はヤバいな」と。

どう考えても異質。画的な恐怖と、想像をかき立たせる恐怖。

これから始まる難儀な事と、主人公がどうこの町に関わっていくのかという、ワクワク感で始めっから手に汗握らせてくれるのだ!

浪人役として最もカッコよくて強い男・三船敏郎

三船敏郎のカッコよさを説明するには、いくら文字数があっても足りない。
無限に必要だ。

だが、書くしかない。語り続けるしかない。
若い世代や、知らない人の為に、知っている人は伝える義務があると思っている。

菅田将暉やら、佐藤健じゃ足りないよ。

ただの好青年じゃないか・・・。

迫力をちょうだいよ・・・。

 

三船敏郎の身体能力

この人、出征しているのだが、軍隊の生活が楽だったと語るタフさ。
もしそれがカッコつけだとしても、画から伝わってくるタフさと一致してる。

屈強な、ナチュラルな身体から繰り広げられる殺陣。

三船敏郎(三十郎)は一人につき二度斬る?

これだ。

これは黒澤明と殺陣師と相談の上、リアリティを出すには、
人は一度斬っただけでは死なないかもしれない。
というより一度ではまだ立ち向かってくるかもしれない。

という考えから、本作では殺陣で一人につき二度斬るということになった。

言うは簡単だ。
だが、当然簡単ではない。
軽い竹刀ですら立ち回りで二度斬るというのは大変なことだ。

それを、抜き身の真剣ではないが真剣とほぼ同じ位の重さの模造刀で、
きっちり一人二度斬る。

これが出来る役者はそういない。最近の殺陣では軽い模造刀を使っているから、
無理をすればできるかもしれない。出来ている映画もある。

だが、細身の役者が定規を振り回す様な、腰の入っていない姿勢で殺陣をやっているのでは、全くといっていいほど迫力を感じることができない。

褒め言葉を見つけるとしたら「綺麗だね」「流麗だね」だ。

だが、そんなことあるかあ!

人を殺す殺陣は、綺麗では足りない。重みが必要なんだ。
三船敏郎の殺陣を見て勉強してほしい。真似してほしい。
カッコイイだけではない迫力が人殺しにはあるんだ。
人殺しだが、半端な演技じゃないから、悲しみもたたえていて、物語に重厚感を与えるんだ。それを三船敏郎はやりきっている。

三十郎の歩き姿、佇まい、仕草。

こんなにカッコイイ後ろ姿・歩き姿があるのだろうか。。。
いやそりゃ私はファンだからだけど、皆さんはどう思われるのだろう?
一枚の画だが既にカッコよくないですか???

これが映像だと半端じゃないんです。

黒澤明が役者に「癖」を求めるという話は有名だが、
三十郎(三船敏郎)も癖がある。

歩きながら不敵な笑みをうかべ、右肩をゆするのだ。

痒いから肩をゆすっているという設定らしい。
ビートたけしが揺する理由とはちと違う。

三船敏郎がやるとやたらと様になる。
男の人ならば観終わった後に自然と真似しているに違いない。

 

中年期の三船敏郎「男は黙ってサッポロビール」の9年前。

見て、これ。

もう形容しようがない。三船敏郎だ。形容は諦める。

若い頃の美しき三船敏郎ではない。

往年のただ渋いだけの爺さんでもない。

中年期の一番脂ののっている頼れる男、三船敏郎だ。

これが見れるのはこの頃の作品だけなんだ。

 

仲代達矢の敵役としてのハマりかたがヤバい

七人の侍では台詞もない、わずか五秒程度の役者だった仲代達矢が、

遂に黒澤映画で存在感を発揮したのがこの用心棒からだ。

後には黒澤映画には主役として出演する仲代達矢だが、本作での役柄のインパクトというのは半端じゃない。

三十郎の敵役の新田の卯之助を演じる仲代達矢。

「あんまりこっちにくるんじゃねえ!」

この台詞がこびりついて離れない。

ギョロットしたまとわりつく様な眼光と、ピストルを片手に、襟巻きをした出で立ち。

三船敏郎の相手役として、終始拮抗して存在感を出し続けている。

この人がいなければ、三船敏郎もただの浪人だ。

↖︎の写真の後ろに立つ加藤大介も爆笑のすごさなのだが、なんといっても仲代達矢だ。
実際、見る時期によっては、三船敏郎よりも仲代達矢派になってしまうこともある。

この共演って半端ないなあ・・・。

 

黒澤明、娯楽、大衆映画を完成させた男。

脚本がすごいということになるのだが、
現代の娯楽・大衆映画で良作は殆ど黒澤明が50年も前に完成させているテンポだ。

110分。この集中力が程よく持つ尺。

当然本作以前にもこの程度の尺の映画ばかりだが、なかなか本作ほどテンポの好い映画は見つけられない。

総合芸術の映画に、全体のテンポをこれほど意識した監督は中々いない。
そして本作ほど完成されたテンポの映画もそうない。

なにをどうすれば観る側が喜ぶか、というツボを意識しても素晴らしい作品を撮る黒澤明というのはやはりすごいのである。

 

三船敏郎、仲代達矢、役者を引き出す力

そしてなんといっても、役者全てを生かしきる。

これが黒澤明の脚本のすごさだ。

黒澤明の脚本執筆の仕方は、先ずキャラクターを細部に迄こだわり作り上げるところにある。

全てのキャラクターに映画で切り取るまでの生きてきた人生があり、
不明な点は残さず作りこんでいる。

前述の「癖」もその一つだ。癖も何故その癖があるのかというところまで細かく設定されているらしい。

物語を進めてしまいたいところをぐっと堪えて、先ずキャラクターを作り込む。
これがなかなか出来ないことなのだ。

それに重点をおき作る黒澤明は、やはり映画がただ好きというだけではない。

映画をトコトン愛しているということになる。

 

「椿三十郎」へと続く

用心棒の三十郎というキャラクターをそのままに、続編があるのだ。

これはについてもいつかきっちり書きます。

まずは「用心棒」を観てください!

隅から隅まで楽しんでください!

 

 
ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
月、水、金(11:30更新)

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