第二話「タクオという男-3章」~「ヨウコという女-1章」

見知らぬ電話番号

タクオは携帯電話に表示される番号を知らない。
タクオは知らない番号から、かかってきても出ない。

だが、なんとなく、出てみた。

タクオ 「もしも〜し。」

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電話の相手・男 「もしもし。宮地サンのお電話でよろしかったでしょうか?」

タクオ 「え?違いますけど。」

電話の相手・男 「あ、すみません。間違えちゃったみたいで、失礼しました。」

タクオ 「はあ・・・。」

電話は切れる。

タクオは、宮地ではないが、母親の旧姓が宮地なのだ。
電話の相手も違うと言ったらスグに切ったので、別に気にすることないんだろうが、気になる。猛烈に気になる。とりあえず生ビールを飲み干して、お会計をする。

マスター・源氏 「ありがとうございます!また宜しくお願いします!」

とカウンター中から挨拶する。また来ますと言い残してタクオは店を出る。
店の外でタクオは携帯を取り出し、急いで実家に電話をする。
3コールくらいで繋がった。実家に住む妹のミドリが出る。

ミドリ 「はい、もしもし。あタクオか。なに?」

タクオ 「お母さんいる?」

ミドリ 「え?お母さん?今寝てるけど。なに?」

タクオ 「あ。そう。寝てる。ok。じゃいいやなんでもない。じゃねー」

ミドリ 「なんだなんだ。一体、なに?」

タクオ 「なんでもないよ。お母さんには電話あったこと言わなくていいからねー」

ミドリ 「へーい。」

タクオは電話を切った。

なんだろう?なにかあったかと思ったが、思い過ごしだろうと。
ま、いいかと気持ちの整理をつけて、よし、新宿行こー。
タクオは大塚駅に向い歩き出す。新宿までは電車で行くつもりである。

 

ヨウコという女「PONSHU-STORE」 17時過ぎ

ヨウコは新宿三丁目の日本酒が飲み放題の「PONSHU-STORE」の店内で、
小さな丸テーブル、丸椅子に座り、ひたすら日本酒を飲み込んでいる。
3,000円で飲み放題なのだ、しかも時間制限がない。最低でも一升は飲んで帰るつもりである。
冷蔵庫にずらっと並んだ日本酒の中から、何を飲んでもいいこの店のスタイルはヨウコの様な、飲ん兵衛にはピッタリである。

店内のBGMも悪くない。

Stealers Wheel – のmixが流れている

この女は酒場で社交をするつもりが無い。
他の客と目線も合わせず、自分一人の世界で淡々と杯を重ねていく。

普通この店に来たら、数ある日本酒を飲み比べるものだが、ヨウコはいつも一種類か、二種類だだけで飲み続ける。今日はまだ一種類、栃木の西堀で赤ラベル、無濾過生原酒だ。

これは要するに、絞り立ての日本酒で火を通していないピュアで、ちょっと濁っていて飲みやすいがガツンとくる酒だ。

これをヨウコは持ち込んだサクランボをパク付きながら、ひたすらに、取り付かれたように飲み続けている。
他の客は観光客の外国人も含め、ひたすら同じ酒をフルーツで飲み続けているスーツ姿のヤベー女に釘付けだ。
ヨウコは視線を気にせず、ペースを守って淡々と飲み続けている。
本当は一種類を飲み続けることは、店員に見つかれば注意されるところだが、飲み姿が神々しくもあるからか、店員もヨウコには何も言わない。
いつものことだし、乱れることなく帰っていくので、おおらかな気持ちで見守ってくれている。

目鼻立ちのハッキリした、濃いめ、キツめの縄文系の美人ということも、注意されない原因の一つらしい。目は伏し目がちだが、ふとした時に店の壁にかかっている時計を見上げる目線が、ぎらっと光る。形容するとしたら、「なんかカッコいいな」だ。なんか、だ。

ヨウコは九州の大分生まれ

親戚一同みな大酒飲みで、焼酎を水割りで延々と飲み続ける環境で育っている。時には喧嘩があったり、時には大合唱をしたり、ヨウコは中学生に鳴る頃には大人に混じって飲み始めていた。東京の大学に出てくるまでは、ずっと焼酎で育っていたが、東京で日本酒を知った。飲み過ぎればぶっ倒れる飲み方にハマった。周りの同年代は皆、逆に焼酎をよく飲んでいたが、焼酎は急ピッチでは飲まない実家の方針が身体に染み付いているので、日本酒が大好きだ。
焼酎よりも二日酔いは激しい方だが、ヨウコは二日酔いになればスグに頭痛薬を飲んで、対応するからあまり気にしてない。

ヨウコはサクランボが残り二、三個になったところで、杯のペースを上げる。
柿の種とピーナツの食べる配分を調整するのと同じあれだ。
ピーナツが少ないので、柿の種を多めに食べるのだ。
酒はそろそろ8合くらいだ。少しいつもより酔いが回っているのを感じる。
ヨウコは今日は一升いかずに、ソロソロ終いにして、次に行こうかと考えている。

長い髪を一度かき分けて、残った杯を飲み干し。残り一粒のサクランボを口にいれ、
上着と鞄を腕にかけ、ゴミを捨て、杯を店員に返して店を後にする。
一連の行動は迅速かつ、無駄のない動きで妙にカッコイイ。

店員 「ありがとうございましたー。」

ヨウコ 「どうも・・・」

店にいたのはわずかに一時間くらいだ。外は薄暗い。

ヨウコは店を出ると、「ふう・・・」と一息つく。

目をギュッと瞑り、精神統一をした後、目をカッ!と見開き「よし、行きましょう。」と一人つぶやき、歩き出す。
歌舞伎役者か。なんなんだこの女は。

次は、社交だ。アルコールを十分に体内に取り込んだヨウコは、社交しにゴールデン街の方へ向かう。

第三話「ヨウコという女-2章」〜「宮内という男」へ続く

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

 
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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。 経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。 月、水、金(11:30更新)

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