第二話「タクオという男-2章」

皆大好きサッポロ生ビール

タクシーでは気を使う

タクオは運転手に行き先を告げて、車は走り出す。

巣鴨〜大塚間の住宅街、中学校、警察署を抜けていく。

車内では何もBGMがかかっていない。

だが、タクオの脳内では巣鴨に来る時に乗ったタクシーでかかっていたGipsy Kings – Djobi, Djobaがかかっている。

タクオ 「ジョビっ、ジョバっ!ジョビっ。」

運転手がバックミラー越しに怪訝な表情でタクオをみてくる。
目が合ったが、スグに運転手は運転に集中しなおした風だ。
お客さんご機嫌だね。週末か、ああ俺も早く一杯ひっかけてえ・・・。
とでも思ってそうだとタクオは思い。

タクオ 「運転手さん、今日は何時まで?」

運転手 「え?ああ。朝までですねえ」

タクオ 「・・・。お疲れさまです・・・。」

運転手 「はあ・・・」

タクオはまた脳内でまたDjobi, Djobaだ。
今度は口ずさまないように、と考えている内に大塚駅近くだ。

タクオ 「ロータリーの所で大丈夫です。」

運転手 「810円になります。」

車が停まり運転手に1,000円を渡し、「おつり、取っといてください。」と言い扉を開けるように促す。

焼き鳥居酒屋・源氏

タクオはさっさとタクシーを降りて、目当ての焼き鳥居酒屋を目指し歩く。
辺りはあっという間に暗くなってきていて。週末の浮かれた気分が駅前を支配している。
サラリーマン、大学生、日本語学校に通う東南アジア系の学生、その辺に住んでいそうなオッサン、皆、皆浮かれてるねー。

目当ての店のビルに着く。「焼き鳥居酒屋・源氏」は二階だ。二階、三階にはいい店があるもんだ。

タクオはさっと階段を駆け上がり、店の扉をカラカラっと音をたてながら開ける。

おおっ。店内は既に客であふれている。
店主の源さんが「いらっしゃい。一人?」

タクオ 「一人でっす。」

マスター・源 「カウンター空いてるよー。」

タクオ 「うーす」

タクオは席につくなり、「生ビールください。」と。
さっきまでウィスキーで今夜を攻めていたが、一度休憩なのか、ウィスキーを飲んで喉が渇いたのか、二軒目の一杯目はサッポロの生ビールだ。

サッポロの生ビールを出す店は、料理も美味しいに決まっているのだ。

生ビールが運ばれてきた。

タクオは、腕をたくし上げ、杯を傾け半分くらい飲んだところで、料理の注文をする。

タクオ 「マスター、あのもも肉のサラダあるかなあ?チーズのやつです。」

マスター・源 「ありますよっ!。ちょっとお時間頂いていいですかっ?」

タクオ 「勿論!後、オマカセ串盛り五本を。」

マスター・源 「はい。塩、タレどうします?」

タクオ 「タレで、でも塩の方が美味いやつは塩で。」

マスター・源 「はい。かしこまりましたっ。」

マスターの源さんは、40代前半の長髪を後ろで結わえて、ウェーブのかかった前髪をちょろっとたらし、白いサテン生地っぽいちょっと艶のある長袖で、首もとにボタンが三つのシャツをいつも着ている。

180cmを超える長身に、ゴツい顔、ゴツい体格に、その長髪と、シャツが妙な威圧感をかもしだしている。

だが、客へ向ける笑顔は抜群なのだ。

そして、串だけでなく、一品料理が抜群に美味い。そしてかなりお代は安い。
だから、マスターの雰囲気も含めて、たまに良くわからない奇妙感を味わうときがある。

さておき、いつもタクオは飲んでて早い時間で、腹が減ったらいつもこの店にくる。

そうそう、いつだったか、夕方前くらいの時間に店の近所を歩いていたら、買い物バックを肘元あたりに主婦がするように下げて、腰を魅惑的に、くねくね歩いてるマスターを見つけた時には少々驚いた。

なんだか、何にか知らないが、妙に納得してしまったのを覚えている。

カウンターでは両隣で騒がしく、地元ののんべえ達が、やれ安倍はどうだの、息子の嫁がけしからんだの、駅の工事がまだ終わらないことにけしからんだのと、いつも通りやかましい。

おいおい、もっと面白い話はないのかね。と思うが。

おい聞いてくれよお。こないだよお。
ちょっくら駅前の銀行タタイてきたんだけど、なんでか全然現金が無くてよ。
俺も困っちまったから、客も行員も警備員も、全員撃ち殺してきちゃったよ。
がははは!

なんて話じゃ面白いが、困ったものなので、平和を噛み締め、美味しい料理に舌鼓をうって、生ビールで流し込めれば御の字なのである。

なんのこっちゃ。

店員の若い男 「はい、串盛りお待たせしました!」

マスター・源 「お待たせしました!タレで、ネギマ、つくね、レバー、ちょうちん」「塩で、軟骨になってます。」

おおっ。ありがたい。ありがたい!塩は一本に抑えたあたり。
マスター源さんはタクオの良き理解者なのであります。

タクオ 「いただきまっす!」

マスターが、どうぞ。って顔で、「笑顔」でタクオをチラッと見やる。
それが何とも言えずこの店のまた来たくなる原因の一つでもある。
不味けりゃ別だが。

そして、結局、今日も。

う、美味い!うまうま!なのである!

タクオに串を食べる順番とかは無い。気分で食いたい順に、食いたい時、食うだけである。

ああ、でも一週間酒を休んでいたせいか、レバーが染みるほど美味いという訳じゃないな。
なんて思っていたら、

店員の若い男 「はい。もも肉サラダ、チーズのせお待たせしました!」

マスター・源 「お待たせしましたー!あの、今日ちょっと味変えてみました。美味しいですよ!」

タクオ 「おおっ。いいですね!いただきます。あ、生おかわりで」

と言いつつも、タクオは内心「けっ、このジジイ勝手に味変えてんじゃねえ」と穏やかじゃない・・・。

コレは、鶏もも肉を大判一枚使って、サニーレタスやトマトのサラダの上にでーんとのせ、更にとろけるチーズをのせた逸品なのだが、裏メニュー的なやつなので、常連の一部の客しか頼まない。

だからって、勝手に味に手心加えてんじゃねー。とタクオは内心毒づいている。
何味にしたんってんだ?
おし、先ず新しいビールを一口飲んでと。
タクオは、チーズの絡んだもも肉とレタスを口に持っていく。

タクオ 「う、美味い!うまうま!」

カレーーーーーーー!
の、味が少しだけ加わって、チーズと相性抜群。もも肉と相性抜群。
結局美味いのであった。

タクオ 「マスター美味いっす!」

マスター・源 「でしょう!タクオさん好きに決まってるんですよー。あはは」

タクオ 「いやー、結局カレーなんですねーー」

というとマスターは、

マスター・源 「いやいや、ココ(腕)ですよ。」

と言って腕をパシパシやってる。

タクオ 「・・・」

うむ。そうなんだよな。
焼き鳥にしろ、このもも肉サラダにしろ、誰でも作れるようで、そうでない。
世の中の飲ん兵衛達が、俺だって、私だって作ろうと思えば作れると思っているかもしれないが、結局プロが作る飯はB級だろうが、A級だろうが一番美味いのである。

・・・。

さて、腹も一杯になってきたし、コレ(生)飲んだら次行くか。
と思って、ジョッキを口にもっていこうとすると、タクオの携帯が鳴った。

タクオ 「誰だ?」

登録されていない携帯番号からだ。

第二話「タクオという男。- 3章」へ続く

『飲む、飲む、飲む!』は月、水、金曜日の11:30に更新予定です。

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ころまん阿部

ころまん阿部

職業:映画監督(作品なし)。小説家(当ブログ掲載)。脚本家(いっぱい)。。お酒の申し子。
経歴:中学校卒業後、電気工事士として働きだす。その後実兄二人の立ち上げた会社に参加、関連会社立ち上げで香港移住。父親他界の半年前に、父親の事業に叔父と共に参加。それら零細企業の経営を約10年。稼ぎは多いが飲み過ぎがたたり2016年末にアル中判定。全ての仕事から離れ今に至る。良く言えば楽隠居。迷いに迷う20代後半。
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